TORCH OF THE MOB PSYCHOLOGY
クモノスの世界上では
火の手が上がる光景をたびたび目にする。
そのたび、ごうごうと燃え上がる炎を見るたび、
気持ちの悪い感覚をおぼえる。
この感覚の根っこはなんだろうか。
燃え上がる炎に火のついた木切れを放りこんで
歓喜をあげる人の顔。
もっともっと燃えるようにと煽る人の顔。
炎はしだいに勢いを増し、周りを囲む人の数が増えていく。
怒ったそぶりで火のついた木切れを放りこむ人の顔。
野次馬の側から眉をひそめて冷ややかに
自分でも気がつかないうちに火のついた木切れを放りこむ人の顔。
人の顔。人の顔。人の顔。
人の顔というのは時として
とても気持ちが悪い。
うねりに呑み込まれている時や
ブレーキが壊れている時などは特に。
でも、私が何より気持ち悪く思うのは、
その燃えているものが『人』であるということだ。
そこには火をつけられて苦しんでいる人の顔がある。
それを群衆の顔が囲んで、火のついた木切れを放りこんでいる。
炎にあてられ、炎に酔っている顔たちが。
気持ちが悪いし、なにしろ恐ろしい。
そしてさらに、なにが一番恐ろしいかと言えば、
私の手にも無自覚に『火のついた木切れ』が握られているということだ。